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JSTQB(ALTM) シラバス学習:3 レビュー

2019.07.14 更新

3.1 イントロダクション

レビューは静的テストの一種であるため、テストマネージャが責任を持つ(レビューリーダと呼ばれる)ことになります。レビューは品質向上に対してコスト効率の高い手段であるため、効果的なレビューを実施することが重要となります。

 

レビュー参加者の役割

レビューリーダ
  • テスト成功の実現を推進する環境を確保する
  • 効果的な価値をもたらすように測定計画を作成する
テスト担当者
  • 運用での動作とソフトウェアシステムに求められる特徴からレビューする
参加者
  • レビューのトレーニングを受けて、レビューが円滑に行われるように役割を果たす

レビューの種類

レビューリーダがこれらの技法を組み合わせて使用することにより、プロジェクトのテストカバレッジを向上させ、より多くの欠陥を見つけることができるようになります。

  • 契約レビュー
  • 要件レビュー:コードに問題を実装する前に問題を除去できる。機能要件と非機能要件を網羅することが理想的。
  • 基本設計レビュー
  • 詳細設計レビュー
  • コードレビュー:動的テストの補完ができる。
  • テスト成果物レビュー:工数がかかりすぎる問題のチェックができる。
  • テスト開始レビュー
  • テスト終了レビュー
  • 受け入れレビュー

3.2 マネジメントレビューと監査

マネジメントレビュー

マネジメントレビューはプロジェクトの将来に関する決定を行うために実施します。
また、プロセス改善の活動として、プロジェクトの振り返りのために実施します。

目的
  • 適用するリソースの決定
  • 是正措置の実行
  • 対象範囲の変更
手段
  • 進捗状況のモニタリング
  • ステータスの評価
  • 将来の対応の決定
特徴
  • 直接責任を持つマネージャ(または代理)によって実施する
  • 上位マネージャまたは部門長によって実施する(ステークホルダ、意思決定者、または代理)
  • 計画との整合性および逸脱をチェックする
  • マネジメント手順の妥当性をチェックする
  • プロジェクトのリスクを評価する
  • アクションの影響とその測定方法を評価する
  • アクションアイテムや課題や意思決定のリストを作成する

監査

目的
  • プロセス、規制、標準などへの準拠を示すため独立した評価を提供する
特徴
  • 監査リーダが管理、モデレートする
  • 準拠のエビデンスを収集する
  • 観察事項、勧告、是正措置、合否アセスメントのドキュメントの成果物に含む

3.3 レビューのマネジメント

レビュー戦略はテストポリシーと全体的なテスト戦略とに適合させる必要があるため、実施するタイミングが重要となります。

実施タイミング

  • 要件と設計を定義した後
  • ビジネスの目的段階から詳細設計段階までの適切な区切り
  • マネジメントレビューはテスト実行および重大なプロジェクトフェーズの前、途中、後

実施タイミングに関係する要素

  • 対象アイテムの体裁面での完成度合い
  • レビューに適した担当者の参加可能性
  • アイテムの最終版が利用できるタイミング
  • アイテムのレビュープロセスにかかる時間

タイミングごとのレビューリーダの役割

レビュー計画作成前

以下に関する決定を行い、継続的に改善活動を行うために、レビューのためのチェックリストの作成と維持を行います。

  • レビュー対象を定める

対象を定めることにより、適切なレビュータイプ(非公式レビュー、ウォークスルー、テクニカルレビュー、インスペクション)と公式度合いを決定します。

  • レビュー参加者を定める

必要に応じて追加のレビュートレーニングを実施します。

 [レビュー参加者の条件]
 技術と手順の両方に関して適切な知識
 細部に対する完全さと注意力
 コメントが明確かつ優先度付けの正しさ

  • カバーすべきリスクを定める

リスク評価と投資効果の計算からレビューの予算(時間とリソース)を割り当てることができます。投資効果はレビューのコストとレビューせず その後に検出された欠陥に対処するためのコストの差で示されます。品質コストの計算が使用できます。

レビュー計画

以下に関する主要なレビューアが参加できないリスクやトレーニングができないリスクに備えておく必要があります。

  • 技術的要因

 十分な技術的知識を持つレビューアがいること

  • 組織的要因

 すべてのチームをレビュー計画に参加させて責任を持たせること

  • 人的問題

 レビューの準備、必要とされるトレーニングを受講する時間を用意すること

テスト計画時

以下の定義を行います。フィードバックに関する合意した意思決定の実施も含みます。

  • レビュー評価を行うためのメトリクス
  • レビュープロセスの目的
レビュー実施後

レビューで発見した課題や問題の欠陥マネジメントのために重要度と優先度の判断基準を作成します。

  • 識別された課題が解決されていることをレビューメトリクスを収集して確認する
  • レビューの投資効果(ROI)をレビューメトリクスを収集して確認する
  • フィードバック情報をステークホルダに提供する
  • フィードバック情報をレビュー参加者に提供する
レビューの評価

レビュー参加者が提供する測定指標を使用してレビューの評価を効率よく実施します。レビューメトリクスは賞罰には使用せずレビュープロセス自体に焦点を置いて、レビューリーダが中心となり原因の調査を行います。

  • レビューレポートの結果と実際の結果の比較
  • 成果物レビューの実施後に欠陥を発見した場合のレビュープロセスの見直し
  • レビューチームの編成やレビューツール、トレーニングなど欠陥を見逃した要因の確認
  • 検出効率の低下がないことの確認(時間経過によりレビューの効果が失われて検出効率が落ちることがある) 
 繰り返し

プロジェクトレビューは必要に応じて繰り返し実施します。
回数、タイプ、編成はプロジェクトの規模や複雑さ、プロダクトリスクに依存します。

3.4 レビューのためのメトリクス

レビューリーダ(テストマネージャ)はメトリクスをレビューで使用できるように定量化して、プロダクト評価/プロセス評価をすることにより投資効果、レビュー効率、レポート活動改善、プロセス改善活動に活用します。

メトリクスによる測定

目的別に以下のメトリクスを測定してレポートします。

プロダクト評価

実施コスト評価

  • 成果物のページ数、コード行数などのサイズ
  • レビューの準備時間
  • レビューの実施時間
  • レビュープロセスの期間
  • レビューのタイプ
  • 欠陥を解決するための解析・修正・再評価時間

品質評価/次工程に進めるか評価

ここで出た結果は次工程で重点的に評価すべきポイントの絞り込みにも使います。

  • 発見した欠陥の数とそれらの重要度
  • 平均欠陥密度(欠陥検出効率)
  • 推定残存欠陥数または残存欠陥密度(欠陥除去率)
  • 成果物内の欠陥の偏在の識別
プロセス評価

プロセス評価にはプロダクト評価のメトリクスも使用でき、さらに以下のようなメトリクスも用います。

  • 計画した成果物の網羅率
  • レビュープロセスの活動とタイミング
  • レビュープロセスの効果と効率性
  • レビューで発見した欠陥と動的テストや運用後に発見した欠陥の比
  • レビュータイプと欠陥検出効率の相関関係(レビュー効率の良いタイプ)
  • レビュアー数
  • 作業時間当たりの欠陥検出数
  • 平均欠陥工数((総検出時間+総修正時間)÷ 総欠陥数 )
  • 節約される推定時間

 3.5 公式レビューのマネジメント

公式レビューの特性

  • レビューの開始基準と終了基準
  • レビュアーが使用するチェックリスト
  • レポート、評価シートなどの提供物
  • レビューの効果、効率、進捗を示すメトリクス

公式レビューのフェーズ

レビューリーダは公式レビュー開始前に開始基準の前提条件を満たしているか確認を行います。公式レビューの状況は常にモニタリングを行い、プロジェクトの品質保証活動を進めます。

  • 計画
  • キックオフ
  • 準備
  • レビューミーティング
  • 再作業
  • フォローアップ

前提条件を満たさない場合の対応

開始基準の前提条件を満たしていない場合には、レビュー責任者の最終判断を確認して対応を決めます。

  • レビューの再定義
  • レビューを進めるための是正措置
  • レビューの延期